スタンス
偏らない強さ
バランスがいいということを、
そのまま切り取ると、
特徴がないように捉えられることもある。
しかし、
本当に優れたバランス感覚は、
それ自体が大きな強さである。
私たちは、
強みをつくることや、
得意分野を伸ばすことを求められる。
ただ、
土台となる力を欠いたまま、
一部分だけを尖らせれば、
どこかに無理が生まれる。
私の中では、
かつての大学入試センター試験に似た感覚がある。
まず、
幅広い科目で、
土台となる点数を取る。
その上で、
自分の強みを生かして勝負する。
得意なものだけを伸ばせばいいのではない。
まず全体を整え、
その土台の上に、
自分の強みをつくっていく。
建築も同じである。
外側だけを整えても、
基礎が弱ければ長くは持たない。
一部分だけが優れていても、
全体のバランスが崩れていれば、
どこかに歪みが生まれる。
東洋思想には、
陰と陽という考え方がある。
光があれば影があり、
右があれば左がある。
片方だけが存在することはない。
仏教における中道も、
単に「ほどほど」という意味ではない。
どちらか一方に偏ることなく、
全体が見える地点に立つこと。
その場所に立つからこそ、
状況に応じて、
右にも左にも動くことができる。
世の中は、
前向きであること、
成功すること、
明るくあることを強く求める。
いわゆるポジティブであることが、
半ば強制のようになっている。
だが、
前向きであることだけを正しいとすれば、
それもまた偏りになる。
偏らないということは、
どちらにも動かないことではない。
両方を見た上で、
必要な方向へ動くことである。
バランスとは、
平均的であることではない。
何も選ばないことでもない。
全体を整えた上で、
自分の強みを生かす。
両極を理解した上で、
必要な方向へ動く。
それこそが、
偏らない強さなのだと思う。