ホテルニューアワジの施工に加えて、数々のホテルで仕事を共にしてきた関西ハウス工業と株式会社ホテルニューアワジ。代表の原田が淡路島の建設業をリードするような企業に成長したいと決心した背景には、木下社長の仕事への姿勢が大きな影響を与えていました。これまで2人がどんな想いでホテルの建設に携わってきたのか。そして、これからの淡路島の展望について。
株式会社ホテルニューアワジ
代表取締役社長 木下 学 Kinoshita Manabu 京都産業大学を卒業後、株式会社ロイヤルホテルに就職。その後1998年に株式会社ホテルニューアワジに入社し、2006年に専務取締役、2015年に代表取締役に就任。現在は、株式会社HNA神戸代表取締役社長を兼務。ホテルニューアワジに加え、京都・神戸・香川・岡山に16のホテル展開に携わる。
「明かりを灯す」その想いが
淡路島の外へと広がっていった。
原田:これまで木下社長は、ホテルニューアワジの社長として淡路島以外にも、京都・神戸・香川・岡山に16のホテルを展開されていますが、なぜそのように精力的な活動をおこなってこられたのでしょうか?
木下:私の中で「明かりを灯し続ける」という言葉が、大事なキーワードになっています。新たにお預かりしたホテルのリブランディングをはじめたのが1990年代後半のこと。当時はバブルの崩壊や、阪神淡路大震災があって、旅行客が減り、衰退する同業他社がたくさん出たタイミングでもありました。そこで、日本の地域に「明かりを灯し続けなければ」と思い、苦境にあえぐホテルのリブランディングをはじめました。次第に、実績を評価いただくようになり、少しずつお声掛けが増えていった結果、いくつものホテルをグループ傘下として手がけるようになった、というのが経緯になりますね。
原田:木下社長の手がけるブランディングは、想像を超えるというか、そんなことができるんだといつも驚かされます。特に印象的だったのは2008年の香川県の琴平花壇のリニューアルです。私が木下社長と初めて仕事をさせていただいた、デビュー戦でもありました。
木下:琴平花壇は私もよく覚えています。全国でも有名な旅館でしたし、お声掛けをいただいた時も非常に驚いたくらいですから。最初はかなり不安な気持ちもありましたね。昔は琴平花壇というと地域一番の老舗旅館でしたが、当時は勢いを落とし、廃業に追い込まれるかどうかの状況。そこで、私がまず最初に言ったのは「今一度、全国でも有名な温泉地を作りましょう」ということでした。時代に合わせて、団体様ではなく、しっかり個人向けの地域一番店を作りたいと思ったんです。
原田:木下社長のこだわられていた「竹林の見える温泉」など近くの自然を生かした景観づくりや、山から下りてくる「気の流れ」まで意識した琴平花壇のブランディングは本当に感動しました。リニューアル前と後でこんなに変わるものなのかと驚かされました。
木下:ブランディングをする上で、私たちはサービスの部分を手がけることはできても、設計や建築といった「箱」の部分を手がける技術はありません。つまり、これまでに様々な施設の建設を担っていただいた関西ハウス工業さんがいなければ、私どもの発展や、観光を通じての活性化が出来なかったと言っても過言ではないと思っています。
地の利を活かす。
それが本質的なブランディングに繋がる。
原田:木下社長は、新しくホテルを作るときに、どんなことを意識されているのでしょうか?
木下:まずは「味方につけるものは何なのか」ということを考えるようにしています。それが、琴平花壇の場合だと庭でした。だからこそ、竹林を楽しめる露天風呂を作ったりしたんです。もちろん場所によって、海だったり山だったり空だったりいろいろあるわけですが、その土地にしかないもの。それを活かして再建させていくことが本質的なブランディングなんじゃないかなと思っています。
原田:施工の世界は、図面通りやればいいという考えで止まってしまうことが多いんです。だから、木下社長がおっしゃる「本当の価値ある空間を目指す」という姿勢には、いつもハッとさせられますね。
木下:最近ではSDGsという言葉も多く聞かれるようになりましたが、私たちがやっている仕事はSDGsを地で行っている活動だと思います。例えば、地方都市にホテルを作ると、その地域の観光客が増えますし、地域の食材を地産地消できますし、街全体を活性化することに繋がる。まさに持続可能なまちづくりに貢献できているんじゃないでしょうか。
原田:各地方都市を開発し、再生へ導いていくにはとてつもないエネルギーが必要かと思うんですが、木下社長のエネルギーの源泉はどこから来ているのでしょうか?
木下:磨けば光るものはその土地にあるから、それを生かしてみたい、という想いが大きいですね。利益を大きくしたい、事業を拡大したいという目先の視点ではなく、埋もれた魅力を最大限に発揮できるようなホテルを作り、地方を元気にしたいという考えが私の根本にあるのかもしれません。
建設業というよりも、
観光業として淡路島を支えていく。
原田:私自身3代目経営者として会社の変革を目指し日々奔走していますが、御社のような誰もが知る会社が変革していくには、想像を超える難しさがあるのではないかと思います。それでも大胆に変化をしつづける理由と、私たちのように変化を目指す企業にアドバイスをお願いします。
木下:過去を肯定することがすごく大事なのではないでしょうか。時代が変わっているからといって、何でも新しくしていくのは良くないと思います。実際、私の周りの経営者でも先代が培ってきたことを、全部新しくした人はうまくいっているケースが少なく感じます。守るべきことと、変えていかないといけないことをしっかり分けて時代の変化に対応する。それが大事だと思いますね。
原田:ありがとうございます。これからは自分が担っていく、という意識だけではなく、後世にも受け継いでいくことも見据えていきたいと思っています。最後に、淡路島の観光産業の今後の展望と、建設業が担うべき役割・期待などについて、木下社長の考えをお聞かせください。
木下:最近ではよく「映える」とか言うじゃないですか。でも、それのもっと高いレベルのことを実現するのが建築なわけですよ。淡路島はこれだけの自然があって、それができるポテンシャルのある土地だと私は思います。
原田:おかしな話かもしれませんが、淡路島に人を呼ぶ、淡路島の素晴らしさを感じてもらうという目的においては、自分を建設業の人間だと思っていません。業界や業種の枠にとらわれていては、チャレンジも制限される。観光業など他の業界の良いところを学びながら成長していきたいと思っています。
木下:淡路島は、周辺の都市部と非常に近いっていうのが最大の利点で、車を走らせればすぐ自然豊かな場所に出会えるのは魅力ですよね。何より、この淡路島の魅力は、淡路島生まれの原田社長が一番よくお分かりだと思います。これからも、淡路島全体の「景観の再構築」を原田社長と一緒にやっていけたらと思いますね。
原田:嬉しいお言葉をありがとうございます。ぜひこれからもよろしくお願いいたします。
「今度は家族がクルーザーに乗って瀬戸内海を満喫する日本初のラグジュアリーホテルをつくる」と、その予定地を指さし新たなコンセプトを披露する木下社長。穏やかな表情で見つめるその先には淡路島の新しい景観が確かに広がっている。
ホテルニューアワジ
所在地: 〒656-0023 兵庫県洲本市小路谷20番地(古茂江海岸)
電話: 0799-23-2200
ホームページ: https://www.newawaji-hotels.com/